【NEW!】Sempa社(ドイツ)の高感度水蒸気透過率測定装置ニューモデル:HiBarSens®2.0シリーズ


原理

標準法としての等圧法は測定室内の水蒸気濃度が一定となる平衡状態での測定のため精度が高いことが特徴ですが、10-6g/m2d以下の測定には検出感度が不十分です。一方、擬似等圧法は、等圧法よりも一桁低いWVTR測定が可能なものの、測定室内の水蒸気濃度が上昇しつつある、つまり、非平衡状態での測定であるために測定精度が悪くなるマイナス面を持っています。これは、バリアフィルムを透過してくる水分が測定室内の空間にとどまるものと、壁に吸着するものに分かれるためで、その壁での水蒸気の吸脱着量が不明であるために精度が落ちる、そしてその影響がバリア性能の高いところでの測定でより顕著になるということです。これは非平衡状態下(水分圧が変化する状態)での測定の原理的な問題と言えます。

そこで、この問題を解決し、検出感度と測定精度を上げるために、第3の方法としてDiffusion controlled method(拡散制御法)という新たな測定方法を開発しました。これは、測定室内へのN2ガス導入は止めますが、ガスの出口に特定の内径と長さを有した細管を接続し、その先でN2ガスを流すように構成を変更して測定するものです。そうすると、水蒸気排出口の水蒸気濃度はゼロで、水蒸気充満室の水蒸気濃度は一定に保たれるので、測定室内の水蒸気濃度も時間とともに一定となる、つまり、平衡状態となります。その平衡状態における測定室内の水蒸気濃度は、細管の長さと内径に依存します(Fickの法則)。拡散制御法は、そのような条件での水蒸気濃度(水分圧一定、平衡状態)からWVTRを求める方法であり、測定室内の水蒸気濃度を高く保ったままでも測定できることから、測定の検出限界の引き下げ(10-6~10-7g/㎡.d)が可能となり、また高い精度を確保できるというものです。⊿ψ(⊿c)が測定室内と出口(下端)の水蒸気濃度差です。

特徴

現在、当社から販売されているHiBarSensは、一定水蒸気濃度に保つ上室とレーザー測定のための下室の間にハイバリアフィルムを挟む構成となっています。水蒸気はハイバリアフィルムを通って測定室に透過してきます。WVTRの測定方法には、N2ガスを流しながら平衡状態になったところでの水蒸気濃度からWVTRを求めるHiBarSensの標準的測定法であるIsostatic method(等圧法)(別名“動的測定”で、10-5g/㎡.dまで測定可能)と、N2ガスを止めた後の測定室内の水蒸気濃度の上昇線の傾斜からWVTRを求めるQuasi-isostatic(擬似等圧法)(別名“静的測定”で、10-6g/㎡.dまで測定可能)があり、この切り替えがバルブの開閉のみで可能になっていることが大きな特徴です。もちろん、ダイオードレーザー吸収分光法を用いた測定原理に基づく下記のような特徴も有しています。

  • ハイバリアフィルムの通常の使用環境である大気中での測定。
  • コンパクト(パン焼き器程度)で、操作も簡単。測定結果に個人差無し。
  • 調整可能な測定湿度は60~95%、測定温度は10~50℃。
  • 長期間安定で、センサー感度の補正なども不要。
  • 独自のアクティブシールにより、サンプルにダメージを与えることなく、高い機密性を維持。

詳細は、日刊工業の“工業材料”の10月号に日本語記事を掲載したのでご覧ください。

 拡散制御法はこのようにたいへん興味深く、また魅力的な方法です。当社は、早速、開発側のIWS、製造元のSempa社と相談し、この拡散制御法による測定もできるように改造した装置(グレードアップ版)も提供できるようにしてもらいました。結果、以下の3種類の装置の販売が可能となりました;

  • HibarSens-TypeA:標準型、動的測定=> ~10-5g/m2d、高精度
  • HiBarSens-TypeB:動的測定、静的測定=> ~10-6g/m2d、ただし精度不足
  • HiBarSens-TypeC:動的測定、静的測定、拡散制御法=> ~10-7g/m2d、高精度

 センサーの感度を上げれば確かに極微量の水蒸気を検出することは可能です。しかし、考慮すべきは、それがバリアフィルムの水蒸気透過率を正しく表しているか?であり、それを検証することが重要です。Dr. Graehlertの講演は、その必要性を実験結果にもとづいて示してくれました。

用途

ハイバリアフィルムの水蒸気透過率の測定や品質検査など。

戻る